徹底解説ネイチャーアクアリウムの作り方!世界一詳しい水草水槽の立ち上げ方法

徹底解説ネイチャーアクアリウムの作り方!世界一詳しい水草水槽の立ち上げ方法

本記事は「ネイチャーアクアリウムを始めてみたい」、「興味はあるけど作り方がわからない」といった初心者の方にに向けてわかりやすく非常に細かく水草水槽の作り方を解説していきます。アクアリウムの魅力や細かいテクニックとともにご紹介しますので、この記事を読んでぜひ美しい水景を作ってみましょう!

ネイチャーアクアリウムとは

1. コンセプト

ネイチャーアクアリウムは写真家、天野尚氏によって確立されたアクアリウムのスタイルです。流木や石、水草を用いて自然の景観を再現し、微生物の働きによって水質を維持します。見た目だけではなくエコシステムそのものを水槽内に再現するのがネイチャーアクアリウムの特徴です。天野氏が創設したADA(アクアデザインアマノ)社はアクアリウム界を代表するブランドで、質の高い器具やツールは世界中の愛好家に選ばれています。

水槽内に生態系を再現するイメージです

2. 水草水槽って難しいの?

写真などで見る水景は丁寧に作られていて難しい印象を受けるかもしれませんが、実際はとても簡単です。なぜなら最終的な景観は水草の成長によって形作られるので、作り手である人間のする作業は意外と少なく、環境さえ整えてあげれば水草が勝手に成長します。よって時間の経過とともに作為のない自然な水景ができるのです。加えて現在ではさまざまな市販の器具があるため、それらを最大限利用することで非常に簡単に美しい水草水槽を作ることができるのです。

器具

それでは必要な器具をひとつひとつご紹介していきます。

1. 水槽

レイアウトを作り水草を育てるための飼育容器です。素材はいくつか種類がありますが、一番のおすすめはフレームレスのガラス水槽です。傷がつきにくく、枠がないため自然を切り取ったかのような水景を作ることができます。

大きい水槽は難しい?

大型水槽は「大変そう」や「難しそう」といった印象を持たれがちです。たしかに大きい水槽は導入時のハードルは高いのですが、実は水量が多い水槽の方が管理が楽です。水質の変動が少なく、水が安定するためです。水槽サイズで悩んでいる場合はスペースの許す限り最大サイズの水槽をおすすめします。ですが小型水槽が難しいかというと決してそのようなことはなく、インテリアとの兼ね合いで小さい水槽を選んでいただいてもかまいません。あくまで大型水槽と比べた場合やや難易度が上がるということなので、初めての方も小型水槽を楽しむことができます。ネイチャーアクアリウム自体が非常に管理が楽なので、水槽のサイズによって大きく難易度が変わるということはありません。

水槽サイズによって難易度に大きな差はないので、好きなサイズを選ぼう

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2. 照明

植物の光合成に光は欠かせません。水槽に適切な照明器具を使うことで水草は健康に育ちます。現在主流なライトはLEDで、さまざまなメーカーからアクアリウム専用の照明が販売されています。ネイチャーアクアリウムの場合は必ず水草育成用を購入しましょう。またLED以外のライトも水草育成に適しています。詳しくは以下の記事で解説しているので参照してください。簡単にご紹介すると水草育成に適したライトは蛍光灯、メタルハライドランプ、LEDの3種類です。

いずれにしても、水草育成専用のものを購入しましょう。家電として販売されているものでも育てることはできますが、安全性や光量を考えると専用のものが無難です。

3. CO2添加装置

植物の光合成には二酸化炭素が不可欠です。水草水槽ではボンベに入ったCO2を水槽内に添加して水草の成長を促します。初心者の方は必要な器具がすべて揃ったセットがおすすめです。CO2を添加するために必要な器具はボンベ、レギュレーター、耐圧チューブ、シリコンチューブ、逆流防止弁、カウンター、ディフューザー(拡散器)です。種類が多くて複雑に感じるかもしれませんが、これらがすべて入っているセットを購入すれば説明書通りに組み立てるだけなのでとても簡単です。最初はセットで購入し、後にディフューザーのサイズを変えるなどして工夫してみましょう。

4. フィルター

フィルターには上部式や外かけ式、内部式などさまざまな種類がありますが、ネイチャーアクアリウムでは外部式フィルターが最も一般的です。外部式フィルターとは名前の通り水槽の外に置くフィルターで、メリットは添加したCO2を逃しにくい、音が小さい、自然の水流を再現できることです。

水槽に吸水、出水パイプを取り付け、吸水パイプを通して飼育水をフィルター本体に落とし、内部でろ過し、モーターによって押し上げられたろ過済みの水が出水パイプから水槽内に戻るという仕組みになっています。

しかし外部式フィルターには水槽の下部、主にキャビネット内にスペースがないと置けないというデメリットがあり初心者の方にはハードルが高いのが現状です。そこでその他の種類のフィルターが選択肢として挙がるのですが、外部式フィルターの次におすすめのフィルターは内部式フィルター外掛け式フィルターです。実際に使ってみて水草水槽におすすめの内部式、外掛け式フィルターは以下の通りです↓

特にジェックスのサイレントフローシリーズは見た目がスッキリしていて水槽内に設置していても存在感がなく、名前の通り本当に静かです。小型水槽にも使えるので大変おすすめです!

外部フィルターがベストだが最初は内部式か外掛け式を選べばOK!

ハード製品は以上になります。

水槽の中身

ここまで水槽周りの器具をご紹介しました。上記のハード製品は必ず揃えてください。これからご紹介する低床やレイアウト素材はレイアウトスタイルによって選ぶものが変わってきますので、どのスタイルでいくかを決めましょう。いよいよ最も楽しい過程に入ります!

低床

水槽の底に敷きます。水草が根を張るだけでなく、水景全体の印象に繋がります。

1. ソイル

ソイルは栄養分を含んだ水中用の土です。ほとんどすべての水草を育てることができます。ソイルを使えば水は自然と多くの水草や熱帯魚が好む弱酸性の軟水になります。また水草によって粒の大きさに好みがありますが、よほど特殊な品種でない限りノーマルタイプで問題なく育ちます。ソイルには栄養系と吸着系の2種類があり、栄養系は養分を豊富に含み、吸着系は水槽内の有害物質を吸着します。水草をソイルに植える通常の水草水槽の場合、おすすめは栄養系ソイルです。それでは両者の特徴を見ていきましょう。

1. 栄養系ソイル (おすすめ)

栄養系ソイルは水草の成長に必要な栄養を豊富に含んでおり、成長のスピードも早いです。その反面余分な栄養はコケの発生につながるため、セット時〜最初の一週間の間にうまくコントロールできなければ水槽がコケだらけになってしまう恐れがあります

初心者にも扱いやすい栄養系ソイルはリベラソイルだと思います。栄養系の中では濁りが少なく水草の育ちも良好です。

2. 吸着系ソイル

吸着系ソイルの長所はなんといっても水が透き通るほど綺麗になることです。有害物質を吸着し、水は弱酸性の軟水になるため初心者にとっては大変使いやすいソイルです。しかし水草の成長が遅いという短所があります。育たない訳ではないのですが、成長が遅いとコケがついてしまうことが多いので、たくさんの水草を植えたい場合は栄養系ソイルをお勧めします。吸着系ソイルは水草の少ない水草や流木や石に水草を活着させてレイアウトする場合に便利です。おすすめの吸着系ソイルは寿工芸から販売されているドクターソイルです。明るい茶色が特徴で、とても水が綺麗になります。

ネイチャーアクアリウムでは栄養系ソイルが主流です

2.砂、砂利

↑ADA コロラドサンド

栄養をまったく含まないただの砂利です。そのため水草を植えて育てることは難しく、ネイチャーアクアリウムではソイルと砂を敷き分けることでソイル部分に水草を植えることが多いです。これらは化粧砂と呼ばれ、川底の雰囲気を演出する際に重宝します。化粧砂を使う際の注意点は水質に影響を与えないか確認することです。貝殻などが含まれていると水はアルカリ性に傾きやすいので注意が必要です。自然の雰囲気を演出する意外にもコリドラスを飼育している場合はソイルではなく砂を使うことが多いです。

レイアウトスタイルを決めよう

ネイチャーアクアリウムのレイアウトスタイルは使う素材によって大きく2つに分かれます。

1. 流木レイアウト

最も多いレイアウトスタイルが流木を用いたレイアウトです。流木は自然感に溢れていて誰でも本格的な水景が作れます。表面に水生のコケを巻きつけたり、活着性の水草を活着させることもできます。また、流木はソイルと同様水質を弱酸性の軟水に調整するので入れるだけで水草や魚の好む水を作ることができます。

2. 石組レイアウト

石は流木とともに使われることが多いですが、単体で主役として用いられることもあります。石のみで作る水景は石組(読み方:いわぐみ)と呼ばれ、日本庭園などで用いられる技法を使って組んでいくのが一般的です。シンプルな分美しく組むのはやや難しいです。また化粧砂と同様、水質に影響を与える石は使わないほうが無難です。

立ち上げ方法

いよいよ立ち上げです。今回は90cm水槽を例に解説していきます。

1. 水槽を設置する

水槽の設置場所は慎重に選びましょう。不安定な場所では倒れる恐れがあるので、しっかりとしたキャビネットにおいてください。また、なるべく太陽光の入らない場所に置くことが望ましいです。通常水草水槽では1日10時間ほど照明を当てるのですが、太陽光がそれ以外の時間に当たってしまうと光量が多すぎてコケが生えてしまいます。太陽の光はコントロールができないので、なるべく当たらないようにしましょう。

2. 低床を入れる、レイアウト素材を入れる

今回は流木を使ってレイアウトをしていきます。

レイアウト素材の置き方には凹型構図、凸型構図、三角構図があります。

凹型構図

左右にものを置く構図です。中央に空間ができることで水槽を広く見せることができます。最も簡単な構図になります。

凸型構図

中央にものを置く構図です。バランスの取り方が難しいですが、安定感のある水景ができます。

三角構図

左右どちらかにものを置く構図です。小型水槽では一番簡単な構図になります。

3. 中景草を植栽

植栽の順番は特に決まっていませんが、流木レイアウトの場合、中→前→後景草の順に植栽することが多いです。中景草は作り込むことで自然感のある水景を作ることができます。また、シダやコケ類は流木に活着させて使用することができます。これだけで自然感が一気に増すのでおすすめです。おすすめの活着系シダはボルビティス・ヒュデロッティ、ミクロソリウム・ナローリーフなどです。

↓ボルビティス・ヒュデロッティ

↓ミクロソリウム・ナローリーフ

4. 前景草を植栽

前景には背丈の低い水草を用います。絨毯状にするならグロッソスティグマやニューラージパールグラス、草原ならばショートヘアーグラスなどがおすすめです。

5. 後景草を植栽、注水し器具を設置する

後景には背丈が高くなる種類を選びましょう。一通り植栽が終わったら器具を取り付けていきます。説明書の通りに設置すれば問題ないと思いますので、ここでは省略します。

日常管理

1. セット初期

最初の一週間は毎日水換えが必要です。まだ水草の水質浄化能力が発揮されていないので、フィルターでのろ過と人為的な水換えが重要になります。一度作った水草水槽は数年間維持することができますが、この一週間が最も忙しい時期です。

2.エビ、 魚を入れよう

セット直後の水槽内は有害物質が溶け込んでいるので、それらをろ過するバクテリアが定着し始めるまで生体を入れることはできません。最初の一週間は手入れをしながらどんな魚が水景に似合うか考える時間にしましょう。

買ってきた魚はいきなり水槽に入れるのではなく、袋ごと水に浮かべて水温を合わせましょう。30分ほど浮かべたら袋の口を開け、水槽の水をコップで袋にうつします。これを3〜5回行った後優しく水槽内に放ちます。こうすることで環境の変化によるストレスが軽減されます。

3. 水換えは週に1回

お疲れ様でした。立ち上げは以上になります。ここからは週に1回の水換えが基本になります。ホース等で3分の1の水を抜き、新しい水を足します。足す水は水道水で構いませんが、水温を合わせ、カルキを抜いておきましょう。

完成

植栽から1〜2ヶ月もすれば水草が育って水景が形作られます。水草の調子がよくなっていくにつれて管理が楽になるのを感じられるでしょう。

最後に

ネイチャーアクアリウムは手軽に自然に触れられる素晴らしい趣味です。この記事は一般的な水草水槽の作り方を解説していますが、レイアウトスタイル、飼育スタイルに制限はありません。世界ではバラエティに富んだユニークな水景を作るアクアスケーパーがたくさんいます。今後もコンテストやSNSを通して作品を共有し、アクアリウム界を盛り上げて行けたらと思います。このサイトは英語版がメインなので、最新の情報はこちらを参照してください。

この記事を読んだすべての方が素晴らしい水景を作れることを祈っています。それでは最後まで読んでいただき本当にありがとうございました!

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